2020年からの新型コロナウイルス感染拡大により、全国的な医療体制の逼迫が問題になっています。エムネスの本社がある広島県も例外ではなく、2020年12月の時点で約700人の陽性者のうち半数の350人が診察を受けられないまま自宅待機を指示されていました。その状況下で自宅待機中の患者が亡くなったことをきっかけとして、広島県による全患者のCTトリアージプロジェクトが発足、エムネスからのCT搭載車と医療クラウドLOOKRECの提供が決定しました。
迅速な検査・診断と安全な運用が課題
新型コロナウイルスのトリアージ待機解消のためには短時間で多くの検査を実施すること、医療従事者の安全を確保することが求められました。
また、このCT検査を受ける方は全てコロナ陽性者のため、他の来院者との接触を減らし、密集を避けなければいけません。これらの課題を解決できるよう、CT搭載車とLOOKRECを活用した撮影、読影、診察の運用の構築がスタートしました。
医療クラウドと移動CT搭載車を提供
LOOKRECはインターネット接続端末があればどこからでも画像の閲覧やレポート記入が可能です。エムネスのエンジニアにより、コロナトリアージ専用のレポーティングシステムが開発・実装され、診断とレポート作成がより迅速にできるようになりました。
読影医は現地に行かずしてLOOKREC上で画像の閲覧と読影・レポート記入ができるので、タイムラグが少なく済む上に感染リスクはゼロになります。
エムネスで所有している移動CT搭載車を隔離した場所に駐車することで、一般の来院者の安全も確保しました。CT車からは携帯電話の回線で画像をアップロードします。
約200検査に対して12分(中央値)で結果まで返却
4日間で約200名の患者の検査とトリアージを行いました。その場で受付、問診票記入、バイタルチェック・採血、CT、診察という流れです。1日目はCTの診断レポート作成に時間がかかるため、CT撮影の間に採血を行うところ、血液検査の結果よりもCTのレポートが早く届くため、2日目から順番を入れ替えました。
CT車内部や技師の装備も特別に対策し、検査に臨みました。結果として、撮影から最短4分、中央値12分での読影結果返却を実現しました。
クラウドだから実現できたこと
1.計画から実施までわずか2日間での立ち上げ
オンプレミスのシステムと違い、関連機器へのインストールの必要がありません。それによって、短時間での肺炎トリアージ専用の読影ツールの開発と実装ができました。
2.チーム医療の安全確保
撮影と診断をクラウドを介して物理的に離れた場所で行うことで、感染リスクを最小化し、対応できる読影医を早期に確保できました。
3.診断のスピード向上
CT車からクラウドへ直接画像をアップロードし、読影や診断結果返却もクラウド上で行うことでトータルのスピード向上を図ることができました。