聖隷富士病院の放射線科に勤務されている塩谷先生のご専門は、オートプシー・イメージング(死亡時画像診断)です。LOOKREC を導入いただいたことによりテレワークが可能となり、静岡県富士市と茨城県つくば市間、4時間の往復が不要になりました。放射線科医の働き方改革に非常に有用であるとおっしゃっている、塩谷先生にお話をお伺いしました。(写真は”新富士駅ホームに進入してくる始発の上り新幹線こだま”。文中の写真も塩谷先生にご提供いただきました。)
緊急事態宣言で移動が困難になったため遠隔読影が必要に
以前は筑波メディカルセンター病院と、院内に併設された筑波剖検センターの両方でオートプシー・イメージング(救急搬送された後に死亡した患者の死因を死後 CT でスクリーニング、剖検センターで解剖される異状死体の死後 CT、MRI と解剖の対比)の研究をしていました。2015年6月に聖隷富士病院に異動してからは、1回/月の割合で日曜日に筑波メディカルセンター病院まで行って死後CTを読影していました。そして、2016年4月、筑波剖検センターにご遺体専用CT装置が設置されて読影数が急増したことに伴って、ほぼ毎週日曜日に富士とつくばを往復していました。
新富士駅出発直後の車窓から望む聖隷富士病院(左下隅の茶色の建物)と富士山
つくば駅前から見た筑波山
しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年4月に第1回目の緊急事態宣言が出されて県間往来が難しくなったため、2020年7月から遠隔読影導入を検討し始めました。2020年5-6月に開催された日本医学放射線学会ウェブ総会で、ICT 活用による放射線科医の働き方改革(日本医学放射線学会ダイバーシティ推進・働き方改革委員会と日本放射線科専門医会・医会の共催)というシンポジウムを視聴したことも強い動機付けになりました。
課題となったのはコストとネットワークの安全性
前記ウェブ総会シンポジウムで聴講した内容は、”導入に向けた病院の意思決定プロセスがすべてで、院長か理事長か開設者等の長の付く人の気持ちが動くか否か、そこだけの問題”というものでした。
遠隔読影導入の際に、長の付く人が最も気にかけるのは安全性と費用かと思います。その点、LOOKRECは 3 省 2 ガイドラインや米国HIPAAといった医療業界のコンプライアンスに準拠した Google Cloud Platform上に構築されたクラウド・サービスなので堅牢です。しかも私が読影する死後CT画像の条件下では、他社様と比較して最も安価でした。
主にオンラインのやりとりで導入が完了
2020年8月に筑波メディカルセンター病院の病院長に、「死後 CT の実地読影を遠隔読影に切り替えたい」とメールで希望をお伝えしたところ、「安全で廉価なシステムなら」という条件下で承認して下さいました。
その翌月には筑波メディカルセンター病院の放射線技術科とオンラインミーティングとメールで、どのようにして遠隔読影を行うかを検討し、LOOKRECを利用することを決定しました。そして、筑波メディカルセンター病院と聖隷富士病院の通信環境を検証後、正式にエムネス社と契約しました。
古いパソコンとネットワーク環境は整備が必要だった
インターネット回線です。LOOKRECは WiFi でも利用可能ですが、回線速度や接続状況によって画像のアップロードや表示に時間がかかることがあり、光ファイバー回線(有線 LAN)が推奨されています。筑波メディカルセンター病院の放射線科部内では WiFi 電波が弱く、大量画像データの送信には無理がありましたので、病院側で新たに光ファイバー回線を契約して頂きました。これにより安定して通信出来る環境が構築できました。聖隷富士病院側では、放射線科受付まで有線 LAN が設置されていましたので、それを読影室まで LAN ケーブルで延長しました。
送信側である筑波メディカルセンターでは、既存のパソコンを利用したので、その追加投資は必要ない一方で、読影側である聖隷富士病院のパソコン(病院から貸与)は古くて、遠隔読影するには大幅にメモリーが不足していましたので、LOOKREC操作専用端末としてノートパソコンを購入しました。モニターは大きいですが、性能的には特にハイスペックではない普通のパソコンです。読影はこれで全く問題ありません。
上記ハード面に加えてソフト面では、紙で運用されていた死後 CT 申込書を、茨城県警と剖検センターのご協力によって電子化していただきました。
今後は病院と診療所の遠隔読影システムを構築したい
筑波メディカルセンター病院と聖隷富士病院間の遠隔読影で最重要視したのは安全性でした。警察が関与する異状死体の死後 CT の情報が外部に流出することがあってはなりません。LOOKREC の安全性は前述しましたが、エムネスには Google クラウド事業で中心的役割を果たされていたような方々が役員として参画されており、非常に安心感がありました。
わたしが読影する時には、ソフト上の非常に限られた機能しか利用していません。他社の遠隔読影システムを利用したことはありませんが、基本的機能の操作性は、どの会社も同じようなものではないかと想像しています。ご遺体の全身死後CTの画像枚数は1件あたり、3000~5000枚ですが、死後 CT 申し込み書のご遺体の情報を読んでいる間に全ての画像が表示されるので、LOOKREC の画像表示速度は遅いなどといったストレスはありません。
LOOKREC を利用することで、遠隔読影導入に対する気持ちの閾値が確実に下がりました。今後は、聖隷富士病院と自宅、聖隷富士病院と当院画像診断機器を利用して頂いている開業医様との間で遠隔読影システムを構築していくつもりです。
LOOKREC のような素晴らしい製品を社会に提供されているエムネスという会社は、もっと有名になっても良いのではないでしょうか?